BOPビジネスって何だ??
BOPとは、Base Of the Pyramideの略です。これらの日本語訳は、低所得者層・貧困層となります。あくまでも経済学的な単語なので決して差別用語でもなく、区別するための用語であることをご理解ください。BOPビジネスについて話すにあたり、BOPの方々とビジネスをするためには、相互による敬意がないと成り立たないことから、あくまでも区別用語であることをご理解いただけると思います。
さて、BOPの定義は、「年収が30万円以下の人たち」です。世界の40億人以上の人たちがここに該当します。(諸説ありますが、ここでは数字の正しさよりも概念に重点を置いて話を進めるのでお含みおきください。)
BOPは別名、世界から見放されている市場
世界の50%以上、人口40億人以上の市場って、魅力的に思いませんか?だって、確実に世界人口のマジョリティにはいるわけですよ。にもかかわらず「世界から見放されている市場」と呼ばれているのは、グローバル経済など、世界に流通するビジネス市場の対象外とされているからです。
年収30万円以下であれば、お金がない消費者と思われますし、BOPの生活圏には、インフラ(道路・電気・ガス・水道)が整っていないことも理由のひとつです。またエリアごとにみると対象者たちは少なく固まっているので、サービスを提供するのに非効率です。例えば、大洋州地域でみてみましょう。バヌアツ・パプアニューギニアなど国をまたがって、BOPにサービスを提供しようと思っても、その対象者が20万人だとするとビジネスが成り立たないと判断されます。
現に日本の上場プライム企業からは、
「50億円くらいの売上規模は、当社の事業規模とは異なります」と直接耳にしたことがあります。
発展途上国など、安くて良い製品を大量に必要としている国や地域は多々あるので、大企業が供給してくれれば、一気に解決するじゃん!!など思っていたのですが、それは僕の勝手な思い込みでした。企業は、利益を追求する集団です。その集団からは、BOP市場は対象外と分析されていたのです。
世界のマジョリティにあたる人たちが、世界経済のマイノリティになるという現実。これが、俗に言う「貧困対策」と呼ばれることの背景にあたるわけです。
だからこそ、社会起業家・ソーシャルビジネスが、徐々に世界では脚光を浴び始めています。儲からないと言われていたBOP市場に、新たなビジネスモデルを立ち上げ成功事例をつくる。そして、更に世界経済においてその成果を反映させて新たな価値を生み出す企業が続々と現れています。それと同時に、BOP市場に参入しては失敗する企業も増えています。
先進国で流行っていたものを、安くBOP市場に提供すれば儲かるというものではありません。工夫や新たなビジネスモデルに変換する必要があるのです。
BOPビジネスとは、このBOP市場において慈善事業ではなく、利益を生み出すビジネス化することで、発展と持続可能なサービスを提供することです。BOP地域において、生産者と消費者が共創することが現在のカタチとなっています。この生産者も、地元BOPが担うことがひとつのキーポイントになっています。従来は、先進国からの生産者が、BOP地域の消費者にサービスを提供するというものでしたが、これではまったく上手くいきませんでした。
共創って青年海外協力隊の得意なことじゃん?!
BOPビジネスという言葉に出会って思ったのが、
「ん??それって青年海外協力隊がずっとやってきたことじゃん??」と直感しました。
いま、これを読んでいる協力隊の人もそう思うんじゃないでしょうか。
青年海外協力隊って、日本の技術を発展途上国に持ち込んで、技術移転・持続可能性をはかることをします。もちろんそれ以外も多々ありますが、かなり大まかに抽象化していますのであしからず。
結構大事にしていることは、「自分が、日本がこの地域から撤退しても、現地の人たちで続けてもらえる方法」を模索し、探求していることです。
これはまさに、生産者は現地人、消費者も現地人、という持続可能的な循環を頭に思い浮かべているからできることです。そのため、青年海外協力隊は大企業のような、大きなお金で投資して何かをするということはほぼありません。地道にコツコツと、大切なことはなにかを伝えたり、一緒に考えることに価値があります。共創という言葉をつかうことは少ないのですが、共創を行動で示しています。
「BOPビジネス」が僕に新たな道を示してくれた
僕は現在、隊員時代2年・帰国して13年の合計15年、発展途上国の過疎地域、バヌアツの離島と活動を続けています。手探りしながらのため、焦らず、まったりとしてきたのですが、正直自分の活動の正体がわからなかったので、モヤモヤはつきまとっていました。モヤモヤというのは、他人にうまく表現できないときに発生します。
「海外ボランティア続けているんだ」と言えば、「へー」で終わるし、協力隊の同期に言っても、「当時の活動を個人的に続けているんだ」と言えば「すごいねー。・・・」で終わっちゃうのです。この時に自分のモヤモヤがでてきました。
「俺って何をやっているんだろう」という、空を切るような感覚です。
そんな時に出会ったのが、この一冊です。
「BOPビジネス 市場共創の戦略」英治出版さんから出版されています。
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もともと、英治出版さんは専門書を扱う硬派な出版社というポジティブなイメージがあったので、知ってから即購入しました。めずらしく、到着にそわそわしていました。多くの成功事例と失敗事例がのっており、アメリカの学者さんと実務者の共同出版を翻訳していることもあり、とてもわかりやすく楽しく読みすすめています。
この本と出会い、自分のモヤモヤが晴れてきました。
モヤモヤが、「知的好奇心」に変わった瞬間です。
15年自分が悩んできたことは、とても特殊で誰と共有すれば良いかわからない悩みがありました。「経済的スキルが自分に足りないから上手くいかないのかなー」など思ったり、アフリカの貧困対策を調べてもイマイチピンとこなかったのです。
もちろんこの本には模範解答など書いてありません。書いてあるのは、光の当て方です。
世界市場、日本市場などの資本主義経済の中央と、BOPビジネスの違い、共通点をわかりやすく教えてくれています。今まで自分が見落としていた角度に光を当ててくれているので、「そういう考え方かー」と発見満載の内容(僕にとっては冒険小説のよう)です。しかも出版年が、2011年8月。まさに自分がバヌアツへ派遣されていたど真ん中の時期。一瞬、「現役当時出会っていたら良かったのになー」なんて思いながらも、きっとあの時にこの本に出会っていても僕は何も理解できなかったでしょう。
かなり遠回りしていたようですが、その遠回りが行間を読むための必要なことだったとをいまならわかります。
いまこの時期に出会えたから、学びと発見に満ちあふれているのです。まさに、バヌアツへ派遣される直前の、未知なる世界にとびこむ前夜が再びやってきました。
「好奇心を満たす」ことが青年海外協力隊への志望動機でした。
そして今も「好奇心を満たす」ことができる感覚が、戻ってきました。
たくさんの着想を得たので、読みすすめながらもアウトプットすることで、自身の活動を見直していきたいと思います。また改めて、思考のプロセスや葛藤を記事にしていきます。